第10回「ポワソン・ダブリルと桜の集い」レポート~4月1日にちなむ「4月の魚」のお菓子

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2015年3月28日、ポワソン・ダブリルの4月1日に先駆けて、第10回目の「ポワソン・ダブリルと桜の集い」を開催いたしました。ご参加の皆様、お店の皆様、どうもありがとうございました。

フランスで「ポワソン・ダブリル(=4月の魚)」を呼ばれる4月1日の由来や風習をより多くの方に知っていただき、楽しんでいただけるようにと、このイベントを起ち上げたのは2006年のこと。 毎年、ポワソン・ダブリルの由来を学びながら、クラシックなスタイルからアレンジバージョンまで、様々なポワソン・ダブリルを食べ比べています。
魚の姿がユーモラスで可愛らしいこともあって、日本でポワソン・ダブリルのお菓子を作るお店も、毎年確実に増えてきました。

2013年開催の会の様子は、NHKのEテレ『グレーテルのかまど ~パリっ子の4月の魚』の取材を受けましたが、今年も、下記日程で再放送されます。番組HPはこちら
2015年4月3日(金)21:30~/2015年4月8日(水)10:30~

今回は、下記8店舗のシェフ達に、シュクレやサレのポワソン・ダブリルを作っていただきました。
パティスリー・レザネフォール 菊地賢一シェフ
ドゥー・パティスリー・カフェ 高山浩二シェフ
アディクト・オ・シュクル 石井英美シェフ
オクトーブル 神田智興シェフ
パティスリー・ビガロー 石井亮シェフ
デセール・ル・コントワール 吉崎大助シェフ
ビストロ・ラ・ノブティックβ 酒巻 浩二シェフ&日髙宣博シェフ
エテ 庄司夏子シェフ

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●パティスリー・レザネフォール 菊地賢一シェフ
パイ生地の中にアーモンドクリームとカスタードを混ぜた“フランジパンヌ”を焼き込み、1台は、その上にカスタードと、フレーズ・デ・ボワ(森苺)とフランボワーズのベリー類のコンフィチュール、少しライムを振った苺とフランボワーズをのせています。
もう1台は、フランジパンヌの上にカスタードと、レモンと仏手柑(ブシュカン)という柑橘類のコンフィ、レモンスライスのコンフィとグレープフルーツの果実でデコレーション。
周りに舞い散るのはホワイトチョコレートと、パスティヤージュ製の桜の花びらです。
フランスの古典菓子をベースに、アレンジを加えて新たなお菓子を考え出すことが得意な菊地シェフらしいポワソン・ダブリル。

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●ドゥー・パティスリー・カフェ 高山浩二シェフ
パイ生地のベースとなるデトランプに、スモークソルトとエダムチーズを練り込み、フィリングにはりんごをフライパンでソテーしたものにカルバドスをふり、エルブ・ド・プロヴァンスで香りづけ。
表面がこんがり香ばしく焼き色づいているのは、スモークソルトとグラニュー糖を混ぜたものでくるんでから焼いてグラッセしているため。一匹にはエディブルフラワーが飾られています。
甘いけれどもほんのりしょっぱい、何とも癖になる味わい。しっかり焼き込んだ菓子をご自身も好む高山シェフらしい1台でした。
なお、ドゥー・パティスリー・カフェは2015年4月11日(土)で現店舗を閉店し、小田急線・祖師谷大蔵駅最寄に移転して5月初旬にオープン予定です。店名も「リムヴェール・パティスリー・カフェ」と変更になります。

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●アディクト・オ・シュクル 石井英美シェフ
パイ生地の中身はアーモンドクリームと、ピスタチオのクレーム・ムースリーヌ。フレーズ・リュバーヴ・オレンジのコンポートと、シュトロイゼルノワゼットのホワイトチョコがけを忍ばせ、表面は苺とホワイトチョコ、ブルーベリーでデコレーション。
ポワソンの表情に男の子と女の子バージョンがあるのが可愛らしく、女性らしい細やかな気遣いです。
フランス菓子らしいパーツの組み合わせで、華やかで凝ったポワソンダブリルを作ってくださいました。

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●オクトーブル 神田智興シェフ
パイ生地の中にアーモンドクリームを敷き込み、りんごのコンポートを塗り、フレッシュのりんごのスライスを並べて焼き上がりにカルバドスを振りかけ、表面をアプリコットジャムでつや出し。ローズマリーを香りのアクセントにしています。
りんごとローズマリーという組み合わせは意外性がありましたが、爽やかな香りがしっかりと焼き込まれたパイ生地の香ばしさを引き立て、新しいマリアージュの発見でした。
焼き菓子として一つにまとまった感のあるポワソン・ダブリル。

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●パティスリー・ビガロー 石井亮シェフ
ハラハラと繊細にこぼれるような、実に口どけのよいパイ生地が印象的。
逆折りのフィユタージュ・ランヴェルセで、密度が詰まりすぎない折り方を工夫しています。
水分を防ぐために中にスポンジ生地を敷いてあり、カスタードに、乳脂肪分47%の生クリームを多めに混ぜたディプロマットと苺でデコレーション。
濃厚でいてふわっと軽い食感のクリームに、苺の甘酸っぱさと、しっかり焼き込まれたパイ生地の香ばしさとのバランスが取れています。
クラシックなフランス菓子を得意とする石井シェフらしく、シンプルな王道の苺のポワソンダブリルでしたが、端正な姿も、存在感も素晴らしかったです。

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●デセール・ル・コントワール 吉崎大助シェフ
お店で時々開催されているデセールコースで、最初の一品として野菜のパイなど塩味系のメニューに使われるベシャメルソースがありますが、それと同じベシャメルをパイ生地に盛り込み、何とフレッシュの黒トリュフをスライスして、ソースが見えなくなるほどたっぷり振りかけてくださいました。吉崎シェフらしい、豪気なスペシャルサービスの1台です。
みっしりと密度の詰まったパイ生地は、途中から天板を載せて押さえて焼成したもの。
普段、お店で出されているデセール用には、軽くしたいので自然な浮きにまかせて焼きっぱなしにしているそうですが、テイクアウト時は水分が回ることも考え、少し詰まった感じにしているとのこと。折り方は、いわゆるフィユタージュ・ランヴェルセで、サクサク感を強調しています。

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●ビストロ・ラ・ノブティックβ 酒巻 浩二シェフ&日髙宣博シェフ
今回はサレ物をお願いしたので、パティスリーではなく、あえて、ビストロの坂巻シェフメインで作っていただきましたが、パイ生地を焼いてくださったのは日髙シェフ。
お菓子用にはもっとしっかり焼き込むそうですが、お惣菜なので、具材の味を邪魔しないよう、少し浅めに焼いたそうです。
1台には、ソテーした海老をソースベシャメルとソースアメリケーヌであえたものをのせ、マッシュルームをトッピング。もう1台は、焼いてフレーク状にした黒鯛と帆立貝のソテーを合わせて、エストラゴン風味のマヨネーズベースソースであえたものをのせ、キュウリをトッピング。どちらも底にはホウレンソウとオニオンソテーを敷きつめています。
料理人らしく、しっかりと下ごしらえされ味の決まった、大変贅沢なポワソン・ダブリル・サレでした。

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●エテ 庄司夏子シェフ
料理人である夏子シェフには、ぜひサレのポワソンをとお願いしたのですが、まず、会場の設備や食べる時の状況に関して細かいヒアリングがあり、そのうえで最適なスタイルを判断してくださって、人数分1人に1台、丁寧に個包装にしてくださったことに驚き!
「日本の春」ならではのポワソン・ダブリルをテーマに、説明書きのリーフレットまで付けてくださったホスピタリティに、皆で感激しました。
魚の形に切り出したパイを焼き、その上に鯛のブランダードを敷き、そこにふきのとうを細かく刻んで忍ばせ、その上に、かにと玉ねぎのエチュベを加えたベシャメルソース。カニと玉ねぎが水分を含んでいるのでブランダードでパイのサクサクを維持し、その上にもったりとしたベシャメルソースをかけ軽く焼いて常温にしたのち、山菜をあしらって春らしさを表現。
フレッシュのうるいの葉、クレソン、この日のためにわざわざ栽培したという菜の花、灰汁を抜いたつくし、茹でた菜の花、アスパラなどで魚の姿を再現。
山菜のそれぞれの美味しさが活きるカットにし、水っぽくならないように茹で方も注意を払い、茹でたてだとみずみずしすぎるので朝一に茹でてから余分な水分を抜くという細心の気遣いを払ったそう。筍は灰汁を抜いたのちコンソメで煮て、さらに香ばしさを加えるべくソテー。随所に細やかな心遣いが施され、「レストランのコックだったことを活かし、ライブ感、出来たて感、季節感をお届けしたかった」というシェフの思いの伝わる品。

また、桜の時期に合わせて、オークウッドの「桜のクッキー」なども召し上がっていただきました。

フランスでは、ポワソン・ダブリルといえば、上司や先生の背中に魚の絵を描いた紙を貼り付けるなど「いたずらしてもいい日」。「復活祭=Paques パック」と重なることが多いので、卵やうさぎのモチーフと共に、多産を象徴する魚のチョコレートはよく見られますが、現在、魚のパイのお菓子を見かけることはほとんどないようです。
しかし、『グレーテルのかまど ~パリっ子の4月の魚』にもご出演いただいたビゴの藤森シェフによれば、かつてフランスで働いていらした頃、パイ生地に苺をのせて魚に見立てたお菓子を作っているお店は確かにあったということ。フランスでも見られなくなったフランス菓子を、日本で広めていくべく、今後もこの会を地道に続けていけたらと思っています。

この「ポワソン・ダブリルと桜の集い」では、2011年3月11日の東日本大震災以来、参加費の一部を被災地支援に寄付しています。 今回は、震災を受けて開始したフレンチシェフ等による炊き出し活動から始まり、福島の子供達への食育・文化交流活動を続ける団体「はっぴーらんちぷろじぇくと」に、10,000円を活動費用として寄付させていただきました。

「はっぴーらんちぷろじぇくと」公式HP
「はっぴーらんちぷろじぇくと」フェイスブック

これからも、より多くの方にポワソン・ダブリルの風習を伝え、楽しんでいただきたいと思います。皆様も、パティスリーでポワソン・ダブリルのお菓子に出会ったら、ぜひ召し上がってみてください。
※「幸せのケーキ共和国」主催「ポワソンダブリルと桜の集い」、過去の開催についてはこちらでご覧ください。
2006年 第1回の様子はこちら
2007年 第2回の様子はこちら
2008年 第3回の様子はこちら
2009年 第4回の様子はこちら
2010年 第5回の様子はこちら
2011年 第6回は震災チャリティーイベントとして開催しました
2012年 第7回の様子はこちら
2013年 第8回の様子はこちら
2014年 第9回の様子はこちら

2015/4/1|取材・レポート
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