第13回「ポワソン・ダブリルと桜の集い」レポート~4月1日にちなむ「4月の魚」のお菓子
2018年の「ポワソン・ダブリル」当日の4月1日、第13回目の「ポワソン・ダブリルと桜の集い」を開催いたしました。ご参加の皆様、お店の皆様、どうもありがとうございました。
フランスで「ポワソン・ダブリル(=4月の魚)」を呼ばれる4月1日の由来や風習をより多くの方に知っていただき、楽しんでいただけるようにと、このイベントを起ち上げたのは2006年のこと。 毎年、ポワソン・ダブリルの由来を学びながら、クラシックなスタイルからアレンジバージョンまで、様々なポワソン・ダブリルを食べ比べています。
今回は、下記のシェフ達に、シュクレやサレのポワソン・ダブリルを作っていただきました。
●メゾン・ジブレー 江森宏之シェフ
2016年には開店準備中で、「アントルメグラッセ」のポワソン・ダブリルで参加してくださった江森シェフ。今回は自店もオープンされ、ケーキも大人気なので、アイスクリームではないアントルメをお願いしました。
パイ生地は、フィュタージュ・ランベルセと言われる、バターをシート状に伸ばして小麦粉ベースの生地を包む製法で、サクサクと軽やか。
下段にコンフィチュールフランボワーズ、クリームは愛媛産の高級柑橘「紅まどんな」の自家製マーマレードとグランマニルエ酒が香るクレーム・ムースリーヌ。
上には江森シェフの故郷である栃木県産の苺「ロイヤルクイーン」と宮崎県産「金柑たまたまエクセレント」を飾って。
切りやすさに配慮して、あまり高く積み上げず、フラットな仕立てにしてくださった気遣いもさすがです。
●ザ・キャピトルホテル東急 安里哲也シェフ
土台のパイ生地は、折る回数を減らして軽さを出したというフィユタージュ・ランベルセ。まずは底にフランボワーズのコンフィチュールをしのばせ、クレーム・ダマンド・ピスターシュを重ねて焼き、キルシュのシロップをアンビベして香り付け。その上にクレーム・パティシエールを薄く絞り、村田農園の「とちおとめ」でデコレーション。
魚の形はディスカスをイメージして成形したそう。苺アレルギーの方のためにと、フランボワーズ使用と、マンゴー使用の可愛らしいプティポワソンも用意してくださいました!
●シンフラ 中野慎太郎シェフ
渋皮煮の栗をウロコに見立てて。長年、開催しているこの会ですが、これまで、栗を主役にしたものはおそらく無かったように思います。
パイ生地の中にはマロンクリームとクレーム・パティシエール。別添のソースは、バルサミコ酢を煮詰め、砂糖を合わせたソース。
仕上げにかけていただくと風味が変わり、栗の甘さをソースの酸味とコクが引き立てます。レストランでのご経験が長い、中野シェフならではの楽しい提案でした!
●オ・プティ・マタン 武井晴峰シェフ
2台、タイプの違うポワソンを用意してくださった武井シェフ。
1台は、スイスでの修業時代の思い出が詰まったスペシャリテ「タルト・ヴォードワーズ」のクリームとクレーム・パティシエール、ヴェルジョワーズを使ったミルフィーユ。クラシックなフォンダン仕上げで千鳥格子模様をまとったお魚を表面に描いた仕上げが武井シェフらしいですね。
もう1台は、こちらの「ガレット・デ・ロワ」と同じ作りで、パイ生地の中は、クレーム・ダマンドに栗のペーストと渋皮煮を入れて焼いたもの。
●菓子工房グリューネベルク 濱田舟志シェフ
2016年の「ラ・テール洋菓子店」ご勤務時代にも、参加してくださった濱田シェフ。
今回は、フィユタージュ・ランベルセに、2割の生クリームを合わせたクレーム・パティシエール。上に苺を飾ったバージョンと、デコポンを飾ったバージョンを作ってくださいました。
●香川調理製菓専門学校 川内唯之先生
シーフードグラタンをテーマにしたポワソン・ダブリル。
いか、帆立、海老は強力粉と塩、オリーブオイルで揉んでから沸騰したお湯で湯がくことで、プリプリの食感になるそう。
玉ねぎ、マッシュルーム、ほうれん草をバターソテー。バターと強力粉でルーブランを作り、鶏ガラスープと牛乳を合わせてベシャメルソースにして、フィユータジュ・ランヴェルセのパイに流し込み、パルミジャーノ・レッジャーノをたっぷりふりかけてオーブン焼きに。
また、桜の時期ということで、岐阜・大垣市の「田中屋せんべい総本家」の一口サイズの小麦粉せんべい「玉穂堂」シリーズより、季節限定の“さくら煎餅”もご紹介。桜餅を思わせる品のよい桜葉の香りに、春が感じられました。
フランスでは、ポワソン・ダブリルといえば、上司や先生の背中に魚の絵を描いた紙を貼り付けるなど「いたずらしてもいい日」。2年連続で、魚の絵を背中にこっそり貼り付けるゲームで盛り上がりましたが、今年はちょっとやり方を変えて、当たった方に、川内先生特製のプラリネボンボンショコラをプレゼント!楽しい時間を過ごしました。
2013年開催の会の様子は、NHKのEテレ『グレーテルのかまど ~パリっ子の4月の魚』の取材を受け、その番組内でも、フランスでのポワソン・ダブリルの楽しみ方が紹介されました。
番組HP内のレシピはこちら。
2018年は、年によって日付の変わる「復活祭=Paques パック」も、4月1日となりました。
パックには、卵やうさぎのモチーフと共に、多産を象徴する魚のチョコレートも見られますが、現在、魚のパイのお菓子を見かけることは、フランスではほとんどないようです。
しかし、『グレーテルのかまど ~パリっ子の4月の魚』にご出演いただいたビゴの藤森シェフをはじめ、何人かのシェフ達から、かつてフランスで働いていらした頃、パイ生地に苺をのせて魚に見立てたお菓子を作っていたお店があったと伺います。
このイベントのためにご依頼したのがきっかけとなって、翌年以降もお店や催事でポワソン・ダブリルを販売してくださるお店も増えてきて、じわじわと広がっている手応えを感じつつあります。
ユーモラスで可愛らしい魚の姿のケーキは、お客様にも喜んでいただいているようです!
今後も、ポワソン・ダブリルに因んだお菓子を作ってくださるお店が少しずつ増えるよう、この会を地道に続けていけたらと思っています。
皆様も、4月1日前後にポワソン・ダブリルのお菓子に出会ったら、ぜひ召し上がってみてくださいね!
【ご報告】
この「ポワソン・ダブリルと桜の集い」では、2011年3月11日の東日本大震災以来、参加費の一部を被災地支援に寄付しています。
参加者の方々はもちろんのこと、主旨に賛同くださったシェフの皆様のご協力のおかげで、今回は、合計44000円の余剰金を捻出することができました。
以下の2団体にそれぞれ活動費用として寄付させていただきました。
「被災地支援団体 aoSORAnt(あおぞらん)」フレンチやイタリアン、和食などジャンルを超えた料理人やサービススタッフなどが被災地を訪れ、炊き出しなどの支援を行う「美味しい食べもの届け隊」として発足。
現在は「被災地支援団体 aoSORAnt(あおぞらん)」に改称し、約200人の関係者が携わり、チャリティディナーや料理教室など活動の幅を広げている。
2016年4月の熊本地震後を受けて、いち早く食のチャリティーイベントを企画。
「熊本復興支援プロジェクト」(カフェビストロ ショコラ)
2016年の熊本地震を受けて、熊本の「カフェビストロ ショコラ」オーナー宮本智久シェフが発起。仮設住宅住まいの子供達にバレンタインチョコレートを届ける活動をはじめ、食を通じて、熊本の震災復興を支援する活動を地道に続けている。
※「幸せのケーキ共和国」主催「ポワソンダブリルと桜の集い」、過去の開催についてはこちらでご覧ください。
2014年 第9回の様子はこちら
2015年 第10回の様子はこちら
2016年 第11回の様子はこちら
2017年 第12回の様子はこちら
2006年 第1回~2013年 第8回のレポートについては、掲載していたブログサービスの終了により、現在は公開されていません。将来的に、改めて情報をまとめ、新規公開することを検討しております。