第11回「ポワソン・ダブリルと桜の集い」レポート~4月1日にちなむ「4月の魚」のお菓子
2016年の「ポワソン・ダブリル」こと4月1日に先駆けて、3月末と4月初めの2回に分けて、第11回目の「ポワソン・ダブリルと桜の集い」を開催いたしました。ご参加の皆様、お店の皆様、どうもありがとうございました。
フランスで「ポワソン・ダブリル(=4月の魚)」を呼ばれる4月1日の由来や風習をより多くの方に知っていただき、楽しんでいただけるようにと、このイベントを起ち上げたのは2006年のこと。 毎年、ポワソン・ダブリルの由来を学びながら、クラシックなスタイルからアレンジバージョンまで、様々なポワソン・ダブリルを食べ比べています。
魚の姿がユーモラスで可愛らしいこともあって、日本でポワソン・ダブリルのお菓子を作るお店も、毎年確実に増えてきました。
今回は、下記10人のシェフ達に、シュクレやサレのポワソン・ダブリルを作っていただきました。
●Ryoura 菅又亮輔シェフ
パイ生地の中身は、軽やかにホイップしたクレームシトロンと、杏、プラム、フィグ、グリオットのポシェ、アーモンド、自家製マーマレード、ピスタチオ、レモンコンフィをゼラチンで固めたジュレ状の層が。
飾りはイチゴと日向夏のコンフィ、フランボワーズ、ブルーベリー。
酸味や甘みのメリハリの効いた味わいに、菅又シェフならではの個性が感じられます。
お店で販売されたものは、これとは異なるバージョンでした。
●エクラ・デ・ジュール 中山洋平シェフ
フィユタージュ・ランベルセと呼ばれる逆折りのパイ生地の中に、ミュールのフランジパーヌにミュールのホールを入れて焼き、ピスタチオのディプロマットクリームとフレッシュのミュールを飾っています。グリーンと紫色のカラーリングがお洒落!
まな板を思わせる大理石のようなマーブル模様のチョコレート細工の上にのせられ、特製BOXに納められた様子も素敵なプレゼンテーションでした。
●アディクト・オ・シュクル 石井英美シェフ
フィユタージュの中に、クレームエペス入りクレームダマンドを敷き、中にラム酒漬けマロングラッセを散らしてあります。
上にコンポット・ポワール・エピセ。スパイスは、シナモン、アニス、クローブ、バニラ使用。
題して“春なのにマロンポワール”。焼きのみ、茶色のみで攻めた一台!
●帝国ホテル ガルガンチュワ 望月完次郎シェフ
魚(ポワソン)の形のサクサクのパイに、カスタードクリームと苺をのせ、アーモンドをあしらった毎年の定番商品。今年は3月26日(土)~ 4月1日(金)の限定でした。
今回は、苺アレルギーがある方への配慮で、ブルーベリーを多めにのせたスペシャルバージョンにしていただきました。
●江森宏之シェフ
現在、独立オープンを目指して準備中の江森シェフ。
ポワソン・ダブリルも、スペシャリテとするアントルメ・グラッセで表現してくださいました。三角形バージョンと四角形バージョンを1台ずつ。
土台は塩味のある桜葉のミンチを焼き込んだダックワーズ、桜の風味のバニラアイス、マスカルポーネのシャーベット、桜のリキュール入り苺シャーベットの爽やかなアイスケーキ仕様。ダックワーズの生地ならば、冷凍されていてもパイ生地に比べてカットしやすいと考えられたそう。
いずれご自身のお店をオープンされたら、毎年4月1日に合わせて、ポワソン・ダブリルのアントルメ・グラッセを発売していただけることを期待したいですね!
●アヴランシュ・ゲネー 上霜考二シェフ
「白苺」を鱗のように並べた、あっと驚くポワソン・ダブリル。
濃厚なディプロマットクリームの上に、白苺は、長野県産の「白雪小町」を使用。
ひらめく尾びれには、薄いパート・フィロを使用しています。
金魚の“出目金”をイメージした、これまでにないインパクトあるデザインのポワソン・ダブリル。フランボワーズジュレ入りのココナッツムースを大きな目玉に見立てているのもユーモラス!
●トレカルム 木村忠彦シェフ
縦向きの半分や薄切りの苺を使ったものが多い中、横にスライスした丸い苺を並べたデザイン。
王道のスタイルかと思いきや、パイ生地の中には一般的なクレームダマンドではなく、アニス入りの自家製マジパンを敷いて焼いています。そこに、ご近所のイタリアンのシェフから頂いたという無農薬レモンで作ったリモンチェッロを染み込ませています。アニス、レモン、苺というのは、シェフがお好きな組み合わせだそうです。
●ラ・テール洋菓子店 濱田舟志シェフ
苺を並べた王道のポワソン・ダブリル。
「クラブ・ドゥ・ラ・ガレット・デ・ロワ」のコンクールでも優勝されている濱田シェフらしく、パイ生地が実に香ばしくサクサクの食感!
ただ、優勝時のガレット・デ・ロワと異なり、パイは逆折りではなく通常の折り込みで、ガレットよりも折り数を少なくしたり、国産小麦のみを使ったりと、違いを出されたそう。
クリームと苺とのバランスもよく、クラシックなフランス菓子らしい存在感でした。
●パッション・ドゥ・ローズ 田中貴士シェフ
構成は下から
1)フィユタージュ・ランヴェルセ
2)アナナス・コンポート バニラ、ラム酒入り。コンスターチで固さを出している
3)バニラクリーム マスカルポーネ入り
4)アナナスのマリネ ジャンジャンブル、蜂蜜、レモンのジュ
5)薄いパイ生地を丸く抜いたものに、白は粉糖を主体に、赤はフリーズドライのフランボワーズパウダーを吹き付けたもの。
最初、目の中をハートにするつもりだったが、どこかにお店や自分である事を入れたいと、金色のバラのマークをひそかに忍ばせたそう。
●香川調理製菓専門学校 川内唯之先生
「ポワソン・ダブリル・コメ・ブラン」
パイ生地はフィユタージュ・ランヴェルセ。中身は鱈とキノコのグラタン風。塩をした生鱈をポワレにして身をほぐす。じゃがいもとアスパラガスを軽く塩ゆで。しめじ、まいたけ、えのき茸は塩胡椒でソテー。焼いたパイの底に「コメネピュレ」にイタリアンパセリを刻み塩を少し加え絞って、再び軽く焼く。そこに、生クリームとゴーダチーズを加えた具材を入れ、ゴーダチーズを振りかけて焼いて完成。イメージは、小麦粉ではなく米製のホワイトルーをのばしたベシャメルソース風。パイはやや塩気強めで、具材の塩加減は控えめのバランスに。
「ポワソン・ダブリル・サクラ・フルール」
パイ生地はフィユタージュ・アンヴェルセ。中身は鮭とキノコのグラタン風。焼いたパイの底に「コメネピュレ」に桜の塩漬けを刻んで絞り空焼き。そこに、生クリームとゴーダチーズを加えた具材を入れ、ゴーダチーズを振りかけて焼いて完成。
おまけで、鮭皮にコメネピュレを塗ってカリカリに焼いたおつまみスナック付き。これがまた好評!
また、桜の時期に合わせて、帝国ホテル・ガルガンチュワで4月末までの限定となる「ガルガンチュワ サンドイッチ(桜)」や、秋田の菓子舗榮太楼「さくらゼリー」も賞味。さらに参加者の方からの差し入れで、魚に合わせたという貝の形のイタリア菓子「スフォリアテッレ」なども召し上がっていただきました。
フランスでは、ポワソン・ダブリルといえば、上司や先生の背中に魚の絵を描いた紙を貼り付けるなど「いたずらしてもいい日」。それに因み、魚の絵を背中にこっそり貼り付けるゲームも行い、人気店のお菓子や紅茶缶などを賞品としてプレゼントし、楽しい時間を過ごしました。
2013年開催の会の様子は、NHKのEテレ『グレーテルのかまど ~パリっ子の4月の魚』の取材を受け、その番組内でも、フランスでのポワソン・ダブリルの楽しみ方が紹介されました。
番組HP内のレシピはこちら。
「復活祭=Paques パック」と時期が重なることが多いので、卵やうさぎのモチーフと共に、多産を象徴する魚のチョコレートなどは見られますが、現在、魚のパイのお菓子を見かけることは、フランスではほとんどないようです。
しかし、『グレーテルのかまど ~パリっ子の4月の魚』にもご出演いただいたビゴの藤森シェフをはじめ、何人かのシェフ達からは、かつてフランスで働いていらした頃、パイ生地に苺をのせて魚に見立てたお菓子を作っていたお店があったというお話を伺っています。
可愛らしい魚形のパイなどは、ショーケースに並んでいても、思わず心惹かれる魅力があります。
今回お願いした中にも、お店でも「ポワソン・ダブリル」のお菓子を販売されている店、今年始めてくださったお店もありました。
今後も、ポワソン・ダブリルを作ってくださるお店が少しずつ増えるよう、この会を地道に続けていけたらと思っています。
皆様も、ポワソン・ダブリルのお菓子に出会ったら、ぜひ召し上がってみてください。
【ご報告】
この「ポワソン・ダブリルと桜の集い」では、2011年3月11日の東日本大震災以来、参加費の一部を被災地支援に寄付しています。
参加者の方々はもちろんのこと、主旨に賛同くださったシェフの皆様のご協力のおかげで、今回は、合計10万円という金額を捻出することができました。
以下の2団体に活動費用として寄付させていただきます。
「被災地支援団体 aoSORAnt(あおぞらん)」フレンチやイタリアン、和食などジャンルを超えた料理人やサービススタッフなどが被災地を訪れ、炊き出しなどの支援を行う「美味しい食べもの届け隊」として発足。
現在は「被災地支援団体 aoSORAnt(あおぞらん)」に改称し、約200人の関係者が携わり、チャリティディナーや料理教室など活動の幅を広げている。
2016年4月の熊本地震を受けて、いち早く食のチャリティーイベントを企画。
「はっぴーらんちぷろじぇくと」
震災後の炊き出し活動から始まり、現在は、福島の子供達への食育・文化交流活動を続けている団体。
※「幸せのケーキ共和国」主催「ポワソンダブリルと桜の集い」、過去の開催についてはこちらでご覧ください。
2006年 第1回の様子はこちら
2007年 第2回の様子はこちら
2008年 第3回の様子はこちら
2009年 第4回の様子はこちら
2010年 第5回の様子はこちら
2011年 第6回は震災チャリティーイベントとして開催しました。
2012年 第7回の様子はこちら
2013年 第8回の様子はこちら
2014年 第9回の様子はこちら
2015年 第10回の様子はこちら