第4回「ポワソン・ダブリルと桜の集い」レポート(2009年)~4月1日にちなむ「4月の魚」のお菓子

※この記事は、2009年4月にスイーツ部@ニフティ(現在はサイトクローズ)に掲載したレポート記事を移設したものです。

フランスでは4月1日を「ポワソン・ダブリル」(Poisson d’Avril)と言います。
ポワソンは「魚」、ダブリルは「4月」で「4月の魚」という意味。
ここ数年、この行事にちなんだ「魚」の姿のお菓子を作るお店が増えてきました。

私も毎年、フードジャーナリストの並木麻輝子先生と共催で、ポワソン・ダブリルのお菓子の試食会を企画していて、今年は4回目でした。
そんな楽しい魚たちの集いをご紹介したいと思います。

4月1日はエイプリルフール(April Fool’s Day)。ちょっとした嘘をついても許される日とされていますが、この日は、フランスでも、冗談やイタズラを仕掛けていい日なのです。
また、贈り物をしあう習慣があり、この時期、お菓子屋さんやチョコレート専門店に並ぶ、魚の形のチョコレートをプレゼントしたりするそうです。

その起源には諸説ありますが、まず、贈り物をする由来は、16世紀半ば、フランス国王シャルル九世が、1年の始まりを4月1日から1月1日に変えたことがきっかけ、と言われます。
人々は、やはり昔からの習慣になじみがあり、国王への反発心もあって、4月1日になると、「嘘の新年」の贈り物を続けた、と言います。

では、どうして「魚」が登場するのか?
この時期はカトリックの「四旬節」に当たり、食事を厳格に節制して肉を食べず魚ばかり食べるので、それが由来となっているという説。
また、ここで言う魚はサバ(maquereau マクロー)のこと。サバはあまり利口ではなく、この時期になると誰でも簡単に釣ることができるので、4月1日にサバを食べさせられた人をからかって「4月の魚」と呼んだからという説。

・・などなど、様々な言い伝えがあります。
ポワソンの集いでは、そんなポワソン・ダブリルにまつわる様々な話を、並木先生の解説交えて学びつつ、ポワソンのお菓子を楽しくいただきました。

今年は、私が毎週月曜にフードのガイドをつとめているJ-WAVEの【RENDEZ-VOUS】でも、「ポワソン・ダブリル」をテーマに取り上げました。
東北沢の「ル・ポミエ」に取材に伺い、シェフのフレデリック・マドレーヌ氏に、フランスでのポワソン・ダブリルの様子を伺ったところ、上司や先生の背中に、こっそり魚の絵を描いた紙を貼り付ける、なんていたずらをよくするというお話。
また、ラジオやTV、新聞などで、ユーモアあふれる嘘のニュースを流したりすることもあるそうです。
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そんな「ル・ポミエ」では、フランスの文化を伝えていきたい!という思いから、毎年、ポワソン・ダブリルにちなんだお菓子や、チョコレートを出しているそう。
ガレット・デ・ロワのように、「ポワソンダブリルにこのお菓子を食べる」といった伝統菓子が決まっている訳ではないので、魚のモチーフから自由にイメージしているそうです。
今年は、マカロンで作ったポワソンのケーキが登場!
丸っこい形のお茶目な表情のポワソンは、ポワソンの会でも注目を集めました。
中にサンドされているのは、フランボワーズのムースとジュレが中に仕込まれたチョコレートのムース。周りにフレッシュの木苺を並べています。
プティガトーサイズですが、ちょっと大きめ。握りこぶしくらいの大きさです。
ほろ苦いチョコレートムースに、フランボワーズの甘酸っぱさは、フランス菓子定番の好相性コンビです。

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他に、実際にポワソンを販売しているお店の1つが、浦和の「パティスリー・アカシエ」。
パイの中には、緑色あざやかなピスタチオのクリームがいっぱいに詰まっていて、ルビーグレープフルーツを焼きこんでいます。上にも、フレッシュのルビーグレープフルーツと洋梨とを飾り、ピスタチオも散らしています。
ポワソン会には、お店で出されているより、ちょっと大きめに焼いていただきました。
ちなみに、このお魚は、「サバ」のイメージだそうです。

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こちらも実際の販売あり。
帝国ホテルのペストリーブティック「ガルガンチュワ」から、2種類のポワソン・ダブリル。苺をのせたものと、ブルーベリーをのせたもの。
アーモンドスライスや粉糖で飾られた、手の込んだデコレーションがホテルらしいですね。

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こういった、パイ生地にカスタードクリーム、苺を飾ったタイプは、日本でも比較的よく見られるベーシックなポワソン・ダブリル。
こちらは「ビゴの店」のプランタン銀座店より。鷺沼にある「ビゴの店」本店では、また魚のデザインが異なるそうです。

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福岡にある「フランス菓子16区」からお取り寄せした「ギャレット・ポワソン」。魚の形のパイ生地の中身は、ラム酒の効いたアーモンドクリームです。

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「パティスリー サロン・ドゥ・テ アミティエ 神楽坂」では、昨年も、お魚形のサブレを発売されていましたが、今年は、パイ生地にクリームをしき、ベリー類をいっぱいにのせたポワソン・ダブリルのお菓子を、特別に作ってくださいました!
ポワソンの会にはホールサイズで作っていただきましたが、お店でも、プティガトーサイズの「ポワッソン・フリュイ・ルージュ」として販売されるそうです。

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ここからは特注。「パティスリー タダシヤナギ八雲店」のポワソン・ダブリル。
ちょうど桜の季節なので、「ポワソンと桜」というテーマで表現してみていただけますかとお願いしたところ、八雲店店長の加藤シェフが、こんなふうに仕上げてくださいました!
サクサクのパイ生地に、カスタードクリームと苺をのせたベーシックなスタイルですが、とても華やかでかわいらしい!
毎年、この会に楽しみに参加してくださっている方の中からも、「今年のベストプレゼンテーションです~!」という喜びの声をいただきました。

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湯島の「ロワゾー・ド・リヨン」にも、毎年特別に作っていただいているのですが、今年は小ぶりアントルメサイズのキュートなポワソン。
ムースリーヌクリームが抜群に美味しいのは、さすが加登シェフ。
こちらのお店は、バタークリームのお菓子がとても美味しく、それと濃厚な特製カスタードクリームとを混ぜたクリームが美味しいのは、大いに納得です!

さて、甘いものばかりでなく、塩味のポワソン、ポワソン・ダブリル・サレもお願いしています。

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中でも圧巻だったのは、下高井戸「ノリエット」のポワソン・サレ。
比較対象が無くて、写真では大きさがよくわからないのですが、体長50cm以上はあろうかという巨大なポワソンは、まるで立派な「新巻鮭」のようです。
中身もとても凝っていて、赤や黄色のパプリカなどが見え隠れする白身の魚のすり身を、生の鮭で上下から包み、崩れないように小松菜で巻いたものを、パイ生地で包んで焼いています。
まるで、料理人のようなお仕事ぶり。もう、その美味しかったことと言ったら・・永井シェフに大感謝です!

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保谷の「アルカション」からは、一見、ピッツア?と思うようなサレ物が登場。
ブリオッシュ生地がベースになっていて、こういうタイプは、私も初めていただきました。
本格的なトマトソース、アンチョビ、グリュイエールチーズとモッツアレラ2種類のチーズなどがたっぷりのって、ボリューム大!
これをお菓子屋さんで作っているとは思わないかも・・。

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ふじみ野(※現在は石神井公園に移転)の「ブロンディール」では、甘い味のシュクレ版と、お惣菜系のサレ版と、1台ずつ用意してくださいました。
シュクレは、カスタードとアーモンドクリームを合わせたクレーム・フランジパーヌに、りんごのピューレをのせ、さらに薄切りのりんごを並べています。
りんごが綺麗な色にそまっているのは、フランボワーズで煮ているためです。とろっとしたピューレや、スライスりんごの甘酸っぱさが何とも言えず、大好評!
キラキラした魚の目玉は、飴でできています。

サレ物は、なんと、フォアグラと鶏レバー、豚肉で作ったパテ入り、アクセントに飴色に炒めた玉葱入りという豪華版!

全部で15種類のポワソンが集まり、差し入れのサブレ・ポワソンもいただいた、賑やかな会でした。
ご協力いただきました各店のシェフの皆様、どうもありがとうございました!

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さらに、パリ出張から帰られたばかりの並木先生がお土産に買ってきてくださったのは、パリのショコラティエ、「パトリック・ロジェ」のポワソン・ショコラです!
中は、サクサクのフィヤンティーヌ入りプラリネ。ナッティーな香りが広がるチョコレートのポワソン、美味しかったです。

また来年もぜひ、この季節に、ポワソン・ダブリルの集いを開催したいと思います!

2016/4/21|取材・レポート
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