第9回「ポワソン・ダブリルと桜の集い」レポート~4月1日にちなむ「4月の魚」のお菓子

2014年3月29日、ポワソン・ダブリルの4月1日に先駆けて、第9回目の「ポワソン・ダブリルと桜の集い」を開催いたしました。ご参加の皆様、お店の皆様、どうもありがとうございました。

より多くのお店で「ポワソン・ダブリル」のお菓子が作られ、多くの方に楽しんでいただけるようにと願い、このイベントを起ち上げたのは2006年のこと。 毎年、ポワソン・ダブリルの由来を学びながら、クラシックなスタイルからアレンジバージョンまで、様々なポワソン・ダブリルを皆さんと楽しんでいます。特注でお願いしたお店でも、楽しんで作っていただいているようで、嬉しい限りです。
魚の姿がユーモラスで可愛らしいこともあって、日本ではポワソン・ダブリルのお菓子を作られるお店も毎年次第に増え、じわじわとブレイクしている印象です。

今年は、こちらのサイトでも、「「4月の魚」という名のスイーツをご存知ですか?」という記事でポワソン・ダブリルについてご紹介いただきました。
2013年に初回放映されたNHKのEテレ『グレーテルのかまど ~パリっ子の4月の魚』も再放送されました。

今回は、下記6店舗で7種のポワソン達を作っていただきました。
パティシエ・シマ 島田進シェフバージョン“クラシック”
パティシエ・シマ 島田徹シェフバージョン“モダン”
シャンドワゾー
ルコント
パーラー・ローレル
オクシタニアル
リベルターブル


●パティシエ・シマ 島田進シェフバージョン“クラシック”

●パティシエ・シマ 島田徹シェフバージョン“モダン”
麹町の「パティシエ・シマ」には、島田進シェフと、息子さんの徹シェフに、それぞれ、クラシックなパイ生地のポワソンダブリルと、自由な発想で作っていただく現代的なポワソン・ダブリルをお願いいたしました。
徹シェフはチョコレートが得意でいらっしゃるので、チョコレート物になるかも?と思ってはいたのですが、このインパクトたるや!「まるで鯉の滝登りのよう!」と会場の話題をさらいます。前述のように、魚の形のチョコレートは、ショコラティエでは復活祭に欠かせないモチーフで、「パティシエ・シマ」のショコラトリー、「ラトリエ・ド・シマ」にも大きな魚の金型が飾ってあります。そんなチョコレートの魚が跳ねあがるチョコレートコーティングの土台の中身は、どっしりしたチョコレートのアントルメ?!と思いきや、なんと軽やかな桜のミルフィーユ。夜桜をも思わせる、日本とフランスの文化が融合したような、まさにこれまでにないモダンなポワソン・ダブリルでした。
一方、お父様の進シェフのポワソン・ダブリルは、スタンダードなパイ生地にカスタードと、オレンジやベリー類などフルーツを飾ったもので見た目もカラフル。ご参加の皆様から「間違いのない、ほっとする味」と喜ばれました。


●シャンドワゾー
シャンドワゾー村山シェフのポワソン・ダブリルは、クレームピスターシュにピスタチオ味のカスタードを重ね、上に2色のグレープフルーツをたっぷり盛り込んだもの。ロースト感強めのピスタチオの香ばしさと、爽やかな酸味のグレープフルーツのジューシーさの対比が魅力的。サクサクのパイ生地の秘密の一つは、クレームピスターシュを敷いて焼く前に、一度生地だけで空焼きをしているためだそうです。写真は凛々しい眉が印象的ですが、もう一台はまつ毛がくるんとカールした、女の子バージョンでした。これはかなり大きめサイズですが、お店でも、注文があれば作っていただけるそうです。


●ルコント
私自身、ルコントが青山一丁目にあった時代、ポワソン・ダブリルに出会うことはありませんでしたが、今、新たな歴史をスタートさせたルコントでは、どんなポワソン・ダブリルを作られるのだろうと、お願いして作っていただきました。
緻密な体の模様が美しく印象的な魚形のパイの中身は、香ばしく味わい深いクレームノワゼット。シンプルな構成ながらとても美味しく、「Poisson d’avril」の文字が描かれた魚の形のホワイトチョコレートのプレートも洒落ています。ちなみにもう一台のお魚チョコプレートはアラザンの目がピンク色でした。


●オクシタニアル
2014年1月12日、水天宮前にオープンした「オクシタニアル」のお菓子は、エグゼクティブシェフのステファン・トレアン氏が監修をされていますが、工房の責任者を務める中山和大シェフは、フランスで二年に一度開催される国際製菓コンクール「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー2011」の日本代表のお一人として出場。作られるお菓子もとても美味しく、大きな期待を寄せてお願いしたのですが、なんと今回は、中山シェフが二回目の出場選手として選出された「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー2015」の日本選考会のために作ったというショコラを使ったアントルメ作品を、ポワソン・ダブリル仕様にしてくださったそうです。ココアパウダー入りのパイ生地に、ビスキュイショコラを敷いて、ヴァローナ社が2012年に発売したブラジル産のフルーティーなカカオ豆を使ったクーベルチュール「マカエ」のガナッシュ・モンテでエレガントにデコレーション。エキゾチックコンポートとライム風味のクレームショコラ入りで、とても凝った内容でした。チョコレートとエキゾチックフルーツとの組み合わせは、南米・ブラジルの地を思わせる、洗練されつつ力強い味でした。


●パーラー・ローレル
お任せで武藤邦弘シェフにお願いしましたが、おそらく息子さんの康生さんが作ってくださるのではないかと思っていたところ、まさに予想どおり、ベルギーのピエール・マルコリーニでも修業され、チョコレート物が得意な康生氏によるチョコレートのガトーのポワソン・ダブリルでした。武藤シェフ、お店にいらっしゃるフランス人のお客様に、ポワソン・ダブリルはどんなお菓子をいただくのか聞いてくださったそうで、魚形のパイのお菓子が多いがチョコレートを使ったものもよくあり、皆で集まって祝うものだから、ガレットデロワのようにフェーヴを入れてもいい、と言われたそうです。そこで今回は、単なる魚形パイではなくちょっと面白いものにと、康生氏のスペシャリテ「コロンビア」をベースに、皆で楽しんでもらえたら、とフェーヴも入れ、王冠もつけてくださったそうです。
ベースのチョコレートムースには、私も昨年見学に伺ったコロンビアの「カサルカ社」によるブランド「ルカカカオ」のチョコレート「コロンビア」を使用。ということはこの魚もアマゾン川に生息する類いのイメージかも?!中にはいちじくのコンポートと、カカオニブをキャラメリゼしたクルスティアンのプレートも入っていて、なめらかなムースの中にカリカリした食感が楽しめます。桜の香りがすると評判でしたが、それは、よく桜餅の香りにたとえられるトンカ豆をチョコレートムースに使っているためでした。

入っていたフェーヴのデザインが、ハンドバッグとハイヒールのミュールととってもオシャレで、女性の皆様の注目を集めました。


●リベルターブル
甘い物ばかりではなく、毎年、1台はサレ物を用意しています。今年は、赤坂の「リベルターブル」森田一頼シェフにお願いしました。鯛を思わせる、実にリアルで細かい模様が見事です!このパイ生地は、ふきのとうを練り込んだもので、清々しい香りが広がります。上にゲランドのフルール・ド・セルものせてあり、ますます、化粧塩をされた尾頭付きを思い起こさせました。中身は、ダナ・ブルーという、ロックフォールを模して作られたデンマークのブルーチーズを使ったホワイトソースに、鴨肉のスモーク入り。実にリッチで、お替わりが欲しい!というリクエスト多数でした。

そして、この会では、桜の時期でもあるということで、毎年、桜のお菓子もご紹介しています。今年は、3月20日にオープンしたばかりの「コレド室町2」に「祇園よねむら」が出した新業態のクッキー専門店「ヨネムラ・ザ・ストア」より、期間限定で4月6日までの「桜フェスティバル」開催中、販売予定の「桜のクッキー」を召し上がっていただきました。

フランスでは、ポワソン・ダブリルといえば、上司や先生の背中に魚の絵を描いた紙を貼り付けるなど「いたずらしてもいい日」。「復活祭=Pâques パック」と重なることが多いので、卵やうさぎのモチーフと共に、多産を象徴する魚のチョコレートはよく見られますが、現在、魚のパイのお菓子を見かけることはほとんどないようです。しかしながら、昨年、『グレーテルのかまど ~パリっ子の4月の魚』にもご出演いただいたビゴの藤森シェフによれば、かつてフランスで働いていらした頃、パイ生地に苺をのせて魚に見立てたお菓子を作っているお店は確かにあったということ。一方、現在30代の世代でフランスで働いていらしたパティシエの方々に伺うと、現地で見たことはないと仰います。引き続き、目撃情報を募集しつつ、この会も地道に続けていけたらと思っています。

この「ポワソン・ダブリルと桜の集い」では、2011年3月11日の東日本大震災以来、参加費の一部を被災地支援に寄付しています。 今回は、震災を受けて開始したフレンチシェフ等による炊き出し活動から始まり、福島の子供達への食育・文化交流活動を続ける団体「はっぴーらんちぷろじぇくと」と、料理人やサービスマンなど食に関わる方々が参加する「NPO法人 被災地支援団体 aoSORAnt(あおぞらんと)」に、それぞれ25,000円を活動費用として寄付させていただきました。
「はっぴーらんちぷろじぇくと」公式HP
「はっぴーらんちぷろじぇくと」フェイスブック
「NPO法人 被災地支援団体 aoSARAnt」

これからも、より多くの方にポワソン・ダブリルの風習を伝え、楽しんでいただきたいと思います。皆様も、パティスリーでポワソン・ダブリルのお菓子に出会った時は、ぜひ召し上がってみてください!
※「幸せのケーキ共和国」主催「ポワソンダブリルと桜の集い」、過去の開催についてはこちらでご覧ください。
2006年 第1回の様子はこちら
2007年 第2回の様子はこちら
2008年 第3回の様子はこちら
2009年 第4回の様子はこちら
2010年 第5回の様子はこちら
2011年 第6回は震災チャリティーイベントとして開催しました
2012年 第7回の様子はこちら
2013年 第8回の様子はこちら

2014/3/31|取材・レポート
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